■家族の医療費を 合算することも
また、家族が同じ健康保険に加入していれば、その家族の医療費も合算できる。必ずしも同居していなくてもよい。ただし合算したい場合は加入する健保に申請をする必要があるので、忘れないようにしよう。
もう一つ注意したいのが、対象とならないものもある点。入院中の食費や居住費、差額ベッド代、通院にかかる交通費は対象外。治療が長引けばこうした費用もかさむ。
冒頭の男性は地元の大きな病院で治療を受けたが、差額ベッド代は個室を選んだこともあり、1日1万5千円以上かかった。寝間着など身の回り品は妻に届けてもらったものの、入院がもっと長引いていたらレンタルする必要があったかもしれない。
さらに、保険がきかない先進医療も対象にならない点は注意しておいたほうがよいだろう。板倉税理士は、制度の「穴」を埋めるためにも「医療保険は入っておいたほうが安心だ」と主張する。
「最近は医療保険も、ひと昔前に比べて安くなってきました。保険料との相談になりますが、高額療養費制度でカバーできない先進医療の治療費を補填してもらえる『先進医療特約』や、入院や手術をしたときに『入院給付金』や『手術給付金』が受け取れる保障のついたものを選ぶとよいでしょう。差額ベッド代や雑費がかさんだときに充てられます」
とはいえ、保険に入れば毎月、保険料を払い続ける必要がある。「それなりの蓄えがあれば、高額療養費制度など公的な制度でカバーできる。病気で収入が大きく減る恐れのある現役世代でなければ、必ずしもいらない」(ファイナンシャルプランナーの長尾義弘さん)といった見方もある。
自分の収入や貯金、支出や保険料を踏まえ、慎重に考えよう。
「最近の医療保険は進歩しているので、若いころに入った保険の保障内容を見直すことをおススメします。保障内容がよくなるのに加え、保険料が下がる場合もあります」(前出の板倉税理士)