
国公立大医学部の前期志願者数の減少に歯止めがかかった。今後は定員削減の可能性もあり、厳しくなりそうだ。AERA 2021年9月27日号の記事を紹介する。
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毎年厳しい競争となる医学部入試だが、ここ数年は志願者が減少していた。受験者動向の指標となる国公立大前期日程の倍率を比べると、2012年度の5.6倍に対して21年度は3.9倍だった。河合塾・教育研究開発本部主席研究員の近藤治さんは、こう話す。
「受験人口の減少に加え、浪人が減ったことが大きい。最近は浪人を嫌って、医学部が無理なら歯学、薬学へと流れる層も出てきました」
しかし今年度は一般選抜前期日程の医学部志願者が31人増と、7年ぶりに増加した。メディカルラボ情報研究所長・山本雄三さんは「共通テストの志願者数がセンター試験より約2万2500人減少したことを考えると、善戦したのでは」と話す。
理由の一つが、予想以上の成績をあげた共通テストだ。特に医学部に課される5教科7科目の平均点は、前年より19点高い571点(河合塾推定値)だった。医学部では共通テストの点数を2段階選抜に用いており、受験生にとって影響は大きい。今年は点数が取れたことで、チャレンジする受験生が増えたようだ。さらに山本さんは「コロナ後の不況を見込んで、安定した職に就きたいという受験生が増加したのでは」と分析する。

■私大は併願校絞り減少
私立大学の志願者数は、前年より5千人減少。ただし、受験生の実数というよりも併願校の減少が影響している。例年、地方の受験生は首都圏の大学を4~5校受けるが、コロナで移動を控え、併願校を絞ったようだ。
一方で山本さんは「コロナと闘う医師の姿が報道され、自分も貢献したいと考える受験生もいたのではないでしょうか」とも指摘する。
実際に医師が活躍するドラマやマンガに影響されて、医師を志す受験生も多い。今年、京都府立医科大学に現役で合格した三上剛史さんは、兵庫県の名門男子校・甲陽学院中高出身。
「母校でも、確かに医学部志望者が増えましたね。旧帝大は変わりませんが2番手大学の医学部志願者が増加しています」