コロナ禍で進んだオンライン採用に関しては、学生も企業も急遽対応が求められた21年卒を経て、22年卒はスムーズに進んでいるという。

「22年卒では、対面とオンラインのすみ分けが進んでいる印象です。最終面接以外はオンラインという企業が多く、グループワークもオンラインで行うケースが増えています。コロナ禍も2年目になり、学生も企業も慣れてきたというところでしょうか。一方で、学生を見ると、昨年1年間オンライン講義が続いたことで気持ちが落ちてしまい、いざ就職活動となってもやる気が起きない、次の目標を探せないという学生がいるのも事実です」

◆市場を読み解き成長企業を見つける

 常見さんは、就活をする学生に対して、社会の状況を把握し、市場を読み解くことの大切さを説く。

「DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉をよく聞くと思いますが、今はデジタル技術の進展によって、すべての産業で構造変化が起きており、企業は対応が求められています。たとえば銀行なら、ネットバンキングなどITの導入により支店の統廃合が進んでいきます。この結果、3大メガバンクの新卒採用は16年がピークで、毎年下がり続けています。そうした状況で、コロナが決定打になったわけです」

 さらに、世界市場で圧倒的な存在感をもつGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)などの企業に比べ、日本企業の存在感が薄くなっていることも指摘する。

「平成元年の世界時価総額ランキングでは、上位50社中32社は日本企業で、さらにトップ5を日本企業が独占していました。しかしながら平成31年になると、上位50社に入った日本企業はトヨタ1社のみ。世界と大きな差が生まれている現状を把握したうえで、新たな分野、成長企業を探すことが重要です。これは、学生だけでなく、大学の教職員も一緒になって努力すべきだと考えています」

 先行きが不透明で不安を感じがちな今、社会に求められる人材になるために、学生時代にどんな力を身につければいいのだろうか。

「今は、100年に1度起こる変化が、毎年起きているような時代。社会に求められる像に自分をあてはめていくよりは、変化する時代に向き合いつつ、これまでをいったんリセットして、これからの社会をデザインする力が必要になると思います。コロナ禍によって抱いていた夢が破れた人も多いと思いますが、今後は新しい分野が必ず生まれてきます。新しい社会をつくる気持ちで、就活に取り組んでもらいたいですね」

(上野裕子)

〇常見陽平
つねみ・ようへい/千葉商科大学国際教養学部准教授。1974年北海道生まれ。一橋大学商学部卒業、同大学大学院社会学研究科修士課程修了。修士(社会学)。リクルート、バンダイなどを経て、2015年から千葉商科大学国際教養学部専任講師。20年から現職。