「もちろん国民の全部がことごとく富豪になることは望ましいことではあるが、人に賢不肖の別、能不能の差があって、誰も彼も一様に富まんとするがごときは望むべからざるところ。したがって富の分配平均などとは思いも寄らぬ空想である。」

左から)河野太郎行政改革相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行(C)朝日新聞社
左から)河野太郎行政改革相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行(C)朝日新聞社

 才能、能力、そして努力を度外に富を分配する社会設計に渋沢栄一は明らかに反対でした。

 ただ、500社ぐらいの会社のみならず、渋沢栄一が設立・運営に関与した教育機関、病院、社会福祉施設、今でいうNPO・NGOという社会的事業は600件と云われています。ここから明らかなのは、渋沢栄一が目指していた日本の新しい時代の豊かな社会では、どのような生まれの立場であっても、仮に社会の「弱者」と云われるようでも、自分が与えられている才能、能力、可能性をフルに活かせて参画できる、「機会平等」というインクルーシブな社会でした。

 ただ、このように機会平等・能力主義性について述べると、それは「勝者側の視点の話」と吐き捨てる意見が少なくありません。そして、現在の多くの若手が昭和時代に築いた「成長」という成功体験に疑念を抱いていることも確かです。

 次期自民党総裁、日本の総理大臣は、日本の新しい時代の成功体験を導く責務を背負います。その新しい時代の成功体験に必要なのは、富の分配型社会を促す法制なのか、それとも、新陳代謝を高める構造改革なのか。いずれにしても、不可欠なのは王道であることに間違いありません。

(渋沢健)

しぶさわ・けん シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役、コモンズ投信株式会社取締役会長。経済同友会幹事、UNDP SDG Impact 企画運営委員会委員、東京大学総長室アドバイザー、成蹊大学客員教授、等。渋沢栄一の玄孫。幼少期から大学卒業まで米国育ち、40歳に独立したときに栄一の思想と出会う。近著は「SDGs投資」(朝日新聞出版)

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