NHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公で「日本資本主義の父」と称される渋沢栄一。渋沢家五代目の渋沢健氏が衝撃を受けたご先祖様の言葉、代々伝わる家訓を綴ります。
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自民党総裁選が注目を集めています。野党は不満を漏らしていますが、日本の次期総理大臣を実施上、決める流れになるでしょう。4人の候補の内、二人が女性であるということは新しい時代の到来に目を引きます。そして、今回は派閥の縛りも過去と比べると影響が少ないという声も上がっています。
ただ、今までの自民党内部の力学(数)の方式で決まるのか。それとも、多くの国民の意向を反映する様に決まるのか。自民党が変わっているという兆しが見えてくるのか、それとも、今までのあり方をやり通すのか。これが、今回の自民党総裁選の見どころです。
いずれにしても、現在の世の中の情勢は有事です。次期自民党総裁、日本総理大臣は王道を行く人物が選ばれることを痛切に願っています。
渋沢栄一は『論語と算盤』で「ただ王道あるのみ」と提唱しています。
「もしそれ富豪も貧民も王道をもって立ち、王道はすなわち人間行為の定規であるという 考をもって世に処すならば、百の法文、千の規則あるよりも遥かに勝った事と思う。」
「定規」とは線を描くときに用いる道具でありますが、要は真っすぐ進む規範という意味でもありましょう。渋沢栄一は、法律や規則は万能薬ではないと指摘しています。人間が真っすぐ進む王道が大事である、と。
もちろん、栄一は完全な自由主義の無法地帯を呼びかけている訳ではありません。現在でも、社会秩序が目まぐるしく変化する昨今において法制が欠落しているという意見があります。健全たる社会には法制が不可欠な設備であることを確かです。
ただ、栄一が懸念していたことは、法律や規則の存在によって人々が思考停止になることではないでしょうか。
「余の希望を述ぶれば、法の制定はもとよりよいが、法が制定されておるからと云って、一も二もなくそれに裁断を仰ぐということは、なるべくせぬようにしたい。」