◆Q 社会人が医学部をめざすことは可能?

「十分可能ですし、やる気がある人にはぜひ挑戦してほしいと思います」と七沢さん。

 社会人は現役の受験生と違って、医師になりたいという目的意識がはっきりしているので、勉強にしっかり取り組みます。記憶力の低下を心配する人がいますが、読解力や思考力は若いときよりもむしろ高まっていると思いますし、十分、合格を狙えるでしょう」(同)

 社会人も一般の受験生と同様、一般入試で入る人が圧倒的に多いが、「学士編入制度」を利用するのも一考だ。4年制大学を卒業した人を対象とした編入学試験で、私立大で実施しているところは東海大などごく一部だが、国からの要請もあり、国公立大の多くはこの制度を設けている。たとえば滋賀医科大は入学定員が15人(2021年秋入試)と多いのが特徴だ(多くの大学では5人程度)。

 入試内容は大学によって異なるが、基本は学力試験と面接。学力試験は英語に加え、生命科学を中心とした総合問題が出題されることが多い。生命科学とは分子細胞生物学や生化学、生理学、神経科学、免疫学、組織学などで構成される理系の学問。文系の人の多くは大学で履修する機会がないため、一から学ぶ必要があるが、対策を実施している塾もある。文系出身の人もあきらめずに挑戦ができる。

◆Q 医学部受験に塾通いは必要?

 医学部の現役合格をめざすなら早くから準備をしたほうがいいのは事実。しかし、七沢さんは中高一貫校の生徒が中学の早いうちから塾に入ることは必ずしもすすめないという。

「まず、高校生と違い、中学生を対象とした医学部受験塾はほとんどありません。また、先取り学習として塾に通わせることを考えている親御さんもいると思いますが、進学校には『塾不要』として、そのぶん宿題が多く課せられている学校も多く、子どもの負担が大きくなってしまいます。まずは学校の勉強に注力し、学ぶべき数学や理科の知識や解き方をしっかり身につけることのほうが医学部合格への近道になります」(同)

 中3くらいからは部活などが忙しくなければ、入塾を考えてもいい時期だ。医学部に特化した塾は、駿台予備学校や河合塾など、医学部コースのある大手予備校と医学部専門塾に大別される。東大受験に特化し、医学部合格者の多い鉄緑会なども有名だ。

「大手塾は生徒の人数が多く、優秀な子が集まるクラスに入ることができれば、合格の可能性が高まります。ただし、授業の内容はハイレベル。双方向ではないので、質問もしにくいかもしれません。宿題も多いので、ついていけなくなると大変です。そのような人には医学部専門塾を中心とした個別対応の塾が向いています。特に受身な人にはコーチングをしてくれる塾を探すことをおすすめします」(同)

七沢英文さん/医学部専門予備校YMS執行役員、校舎責任者。医学部受験指導歴は35年。YMSが発行する「Latticeーいい医者になろう!」編集長。

(文/狩生聖子)

※週刊朝日ムック「医学部に入る2022」より