AERA 2021年10月4日号より

 DeNAに在籍していたときの担当記者はこう話す。

「筒香は大リーグでプレーすることがプロ入り前からの夢でした。思うように活躍できなくてもあきらめる男ではありません。元々器用ではなく、その環境に適応するのに時間がかかる。高卒プロ5年目でレギュラーに定着しましたが、それまでは試行錯誤を繰り返して結果が出なかった。1学年下のヤクルト・山田哲人(てつと・29)のような天才型ではなく、コツコツ積み重ねるタイプです。結果が出たことで自信にもつながっているでしょう」

 それにしても、パイレーツで劇的に変化した「理由」は何なのだろうか。筒香の打撃を見てきた米国駐在の記者が分析する。

「レイズ、ドジャースでプレーしていたときは結果を出そうという焦りもあったのか、完全にフォームが崩れていました。日本の投手と米国の投手では打者がタイミングを取る際の『間』が全く違います。対応するのに時間が必要でしたが、常時出場できる環境ではなかった。ドジャース傘下のマイナー、3Aで試合に出続けた期間が大きかったと思います。打席を重ねることで課題だった速い球にも対応できるようになった。150キロを超える直球を苦にしない打撃で評価も高まっており、今オフは大リーグの複数球団が獲得に動く可能性があります」

■日本人野手が再評価へ

 筒香の活躍は日本球界の野手が大リーグに挑戦する大きな指針になるという。

「投打の二刀流で活躍するエンゼルス・大谷翔平(27)は別格として、近年は日本人野手が思ったような活躍ができていない。筒香が活躍すれば、大リーグ挑戦が噂(うわさ)される広島・鈴木誠也(27)、オリックス・吉田正尚(まさたか・28)ら日本人野手の市場評価が高まる。相手球団も警戒を強めるのでここからが本当の勝負です」

 筒香の今後の活躍が楽しみだ。(ライター・牧忠則)

AERA 2021年10月4日号

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