入ってくるスタッフにとって、私はあくまでライバルなんですよね。もっとプロデューサーに徹することができたら、劇画の世界は大きく変わったかもしれない。そこは劇画家人生最大のポカでしたね。

――代表作の『ゴルゴ13』は、今年で連載50周年を迎える。単行本は現在、189巻を数える。

 当初は10話で終わる予定だったので、最終回のストーリーは頭の中でもう決まっています。一時期、最終回のラフが金庫にしまってあるなんてうわさもありましたけど、それはデマです。私の頭の中にしかありません。いつ発表することになるのか、あるいは私が急にどうにかなって、永遠に発表する機会は訪れないのか、さてどうなるんでしょうね。

 仕事以外でやり残したこと? まあ、私生活だね。やり残したというかやり損ねたというか。亭主も父親もまともにやれなくて、2回結婚に失敗しました。

 子どものころから家に父親がいなくて、きょうだいも年が離れていたせいか、家族の形を知らないまま大人になった。そもそも、結婚という形態そのものに不信感を持っているからいけないのかな。一生ひとりだけを愛し続けるなんてあり得ない。世の中にはこんなにたくさんの異性がいるのに、無理があります。

 子どもは娘が3人。最初のカミさんとのあいだに生まれたいちばん上の娘が、このあいだ還暦になりました。最近、やっと父親らしい扱いをしてくれます。

 死んでも作品が読み継がれていくからいいですね、なんていう人もいるけど、死んだ後のことは知ったこっちゃない。いや、読んでもらえるのはもちろんうれしいですけどね。(聞き手/石原壮一郎)

■さいとう・たかを/1936年、和歌山県生まれ。大阪府育ち。おもな作品に『無用ノ介』『サバイバル』『鬼平犯科帳』など

週刊朝日  2018年7月20日号から一部を再掲

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