占い師、作家 しいたけ.
占い師、作家 しいたけ.
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 AERAの連載「午後3時のしいたけ.相談室」では、話題の占い師であり作家のしいたけ.さんが読者からの相談に回答。しいたけ.さんの独特な語り口でアドバイスをお届けします。

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Q:「生活を楽しむ」ことに目を向けていますがなかなかうまくいきません。家と職場を往復する毎日で、楽しいことといえば稀にライブや舞台の配信を観るぐらい。頻繁に連絡する友人や恋人もおらず楽しいイベントが特に発生しません。料理にもチャレンジしましたが長続きせず。日々楽しく暮らすには何から始めればいいでしょうか?(女性/自営業/37歳/おひつじ座)

A:唐突ですが、先日仕事で行った室蘭で立ち寄ったラーメン屋の話をさせてください。室蘭は昔、製鉄で栄えた町ですが、このご時世だからか、町にはあまり人がいなくて、そこにポツンとラーメン屋さんがあって。お昼時にドアを開けたら満席で、みんな夢中でラーメンをすすっていました。その味と雰囲気がすごく胸に響いたんですよね。グルメ化したラーメンとは違う、魂のこもった味でした。

 夜に宿に帰って、思わず手を合わせてしまったんですね。今日一日を無事に終われたことに対して感謝する、そんな気持ちになりました。ひと昔前までの人たちもそういう「祈り」のために生きてたんじゃないかと思ったんです。

 現代人は、日々刺激を得て、自分のレベルを上げていくことが当たり前になっています。思いついたことに対しての到達速度がすごく速いというか、「今日なにかいいことあるかな?」と思ってネットにつなげると、「何もない」という答えがすぐに出てしまう。これはある種の地獄なんじゃないかと思うんです。

 もちろん昔には昔の地獄もあったと思います。でも昔はもうちょっと自分の中で想像を働かせる時間があった。今日頑張れば明日はもっとよくなるかもしれないという想像ができたはずなんです。

 祈りって、今日自分が生きたことを「当たり前」にしないということです。昔から続く、人々が持ってきた知恵。金持ちになろうとか、レベルアップしようとか、自分のためだけに生きようとすると、やっぱりどこかで虚しくなる。祈りはその虚しさに対抗する手段でもある気がします。

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