期待の若手が多くいる一方、ベテランの力もまだ“使える”はずだ。今夏、多くの元日本代表戦士がJリーグに復帰したが、その中でドイツ、スペインで実績を残した乾貴士(C大阪)は、33歳となった今も変幻自在のドリブルは健在で、南アフリカW杯でも能力を証明した。ただ、9月26日の鹿島戦で負傷交代(30日時点で詳細不明)して10月の代表復帰は絶望的。その代わりに注目したいのが、今夏のJ復帰後6試合で2得点3アシストと結果を出している武藤嘉紀(神戸)だ。プレミア挑戦が失敗に終わり、日本代表のキャリアも停滞したが、まだ29歳である。DFラインの裏へ抜け出す感覚は錆び付いておらず、フィジカル面もアジアレベルならば凌駕できる。10月シリーズも大迫を軸として起用するならば、チームメイトとなって連携を深める武藤との“新ホットライン”に頼る手はある。

 そしてもう一人、“スパイス”になり得るのが、日本が誇る天才レフティー、家長昭博である。卓越した技術と身体的な強さを兼備し、巧みなボールコントロールによるキープ力は国内随一。本田圭佑と同じ35歳だが、プレーのクオリティは落ちていない。A代表出場はザックジャパン時代の2011年8月まで遡るが、「もう一度、見てみたい」との声は根強く、実力だけを見れば間違いなく代表レベルだ。

 経験不足の若手、高齢のベテランの招集の実現性は残念ながら低いかも知れないが、このまま森保ジャパンの攻撃陣が停滞するようならば、これまでとは異なるアプローチ、異なる選手選考が必要になる。運命の10月シリーズで、森保ジャパンがどのような戦いを披露するのか。その結果如何では、スパイス以上の“劇薬”が求められることになる。