アンパンマン風の国際スナイパーが世界を舞台に……いや、そういうことではないですね。
やれなかったことはさておき、やってきたことには満足していました。
「目が黒いうちに、漫画がここまで大きな存在になるとは思わなかった。多少は役に立てたかな」
話の流れで、「死」についてどう考えているかという失礼な質問も。
「死っていうのは、朝起きて夜寝るみたいな当たり前のもの。いつ来てもいい。自分では気が付かないまま産まれてきたんだから、死ぬことも気が付かないんじゃないかな。死についてあれこれ考えるのは、自分への冒涜だと僕は思ってます」
言葉のとおり、きっと穏やかな心境で、次の世界へと旅立っていかれたことでしょう。
ゴルゴは「俺の後ろに立つな」が決まり文句です。しかし、さいとうさんの後ろには、たくさんの漫画家が立って、背中を追い続けてきました。これからも『ゴルゴ13』や『鬼平犯科帳』は続きます。私たち読者も、背中に向かって長年の感謝を捧げ、さいとう作品が盛り上げてくれる娯楽の時間を楽しみましょう。(コラムニスト・石原壮一郎)
※週刊朝日 2021年10月15日号