新ショウガと塩昆布がエッセンスのとうもろこしご飯(事務所提供)
新ショウガと塩昆布がエッセンスのとうもろこしご飯(事務所提供)

──暑い日が続くと冷えたものに手が伸びてしまいますが、避けたほうがよい?

「年をとるにつれ、体が冷えやすくなり、なかなか温まりません。氷水を飲むと胃の負担も大きくなって疲れも出ます。若いころはエネルギーがあふれているので温められますが、中高年は難しい。年齢が上がったら冷たいものはやめたほうがいいです。還暦、いや50代を過ぎたらやめましょう」

──麻木さんは具体的にどんなことをしていますか?

「私はビールも常温で頂いています。あと、朝から冷えた生野菜、も控えます。動き始めたばかりのエンジンを冷やすと大変だからです。野菜はホウレンソウのゴマあえとか蒸し野菜、温野菜。ゆでるより蒸すほうが栄養素が流れ出ないので良いですね。私は朝、土鍋おかゆを頂くことが多いです」

──薬膳を学ぶきっかけは、2010年の脳梗塞(こうそく)、12年の乳がんですね。

「私生活の問題や脳梗塞、乳がん、何より仕事の喪失感というのが大きかったです。当時、生き方に自信を失っていました。子育ても一段落し、娘も離れていくのだな、という喪失感も重なると、眠れなくなったり、お酒の量が増えたりもしました。それだけ自分の体と心を痛めていたら、病気にもなりますよね。今考えれば、生き方を見直す良い機会だったと思います。それまではがむしゃらに突き進んできて、健康管理とか食養生などは意識していませんでした。食生活を見直そう、と考えていたときにたまたま薬膳を知りました」

──生活はどう変わりましたか?

「食事をするたびに自分の体と対話をするようになったことが何より大きいです。薬膳の基本は、陰陽五行という考え方なんです。自然も人間もすべて陰と陽のバランスで成り立っている。仕事でも体でも、自分の思ったところに頑張ってとどまらせようとしても、しょせん無理なんです。大事なのは極端に走らず『中庸に生きる』ということ。頑張りすぎず、怠けすぎず。薬膳を通してそれを心掛けるようになると、気持ちが楽になりました。薬膳から仕事の幅も広がりました。講演やYouTubeでのレシピ公開もそう。コロナ禍に勉強して資格をとりました。すべて私の生活に薬膳があったからです」

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