同社が手掛けた新規事業は数え切れないほどある。すぐに結果が出たものもあれば、アニメ制作や太陽光発電のように時間をかけなければ結果が出ないものもある。オンライン英会話や3Dプリンター事業などは5年ほど赤字が続いたという。
「市場規模が広がると思ったものは赤字でも長い目で見るけど、根本のビジネスモデルが違うと思えばすぐ撤退する。半年も経たずにやめたものは毎年10個以上はあるよ」(同)
■モチベーション「維持」
サービスがつまずけば、新規事業に参加した社員らのモチベーションは下がらないのだろうか。亀山会長は、それを否定しない。
「ゼロから事業をはじめて、失敗してサービスを閉じるのはスタートアップとしては普通のこと。むしろ、会社は潰れるものなんだということを疑似体験できると考えてほしい。少しくらいは落ち込んだほうがいいけど、失敗しても減給はされないし失業もしない。つぎの事業で活躍すればいいだけ。チャンスはあるけどリスクはないんだから、やらない手はないよね」(同)
昨年オープンしたDMMかりゆし水族館は、コロナの煽りを受けて赤字経営が続くが、DMMはその後も、救急車製造事業やオンライン展示会など新規事業の手を緩めない。
「結局のところ、多くの失敗の中からしか成功は生まれない。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるかな。最悪10個に1個当たればいい。9個が1年間赤字で撤退しても、1個が10年間以上稼いでくれればプラスだからね。今、会社の多くが、稼いだお金をため込んだまま緩やかに衰退しているけど、リスクを取らないのもリスクだよ。チャレンジしたい人材が失敗を恐れずに新しいことができる会社。そのほうが不確定で変化の激しい現代を生き残りやすいと思うし、なにより楽しいよ」
(編集部・福井しほ)
※AERA 2021年10月11日号より抜粋