「彼も早稲田で学生運動をしていた。デモから下宿に帰ると、同棲していた彼女が何事もなかったかのようにカレーライスを作ってくれた。世間の騒ぎとは無縁の優しさに触れたら自分がダメになる。彼女の愛に埋没して目標が見えなくなる。それが恐ろしい。これが歌詞の真実だというんです」
「つまり、このサビは男目線の言葉なんだよね」とこうせつさん。「ジョンの『イマジン』もヒットを狙ったわけではない。この曲もヒットさせようとか、そんな気持ちはどこにもなかった。残る曲って、そういうもの」
日々の闘争と、彼女の安らぎの狭間に揺れた青春。人はいつも温かい場所を求めるのだろうか。
闘争心を失う怖さを歌詞に滲ませた作品が半世紀も歌い継がれている。
こうせつさんの新曲「夜明けの風」はコロナでゼロになったライブの再開時に披露、「どんなに世界が暗くても 夜明けの風は吹く」との歌詞がファンに受け、リリースされた。「70歳を過ぎてもこうしてやってるということでみんなが元気になる。それだけで大成功!」
延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞
※週刊朝日 2021年10月15日号