「始発を遅らせたり、止めたりすることは決して許されないため、この3時間は緊張の連続です」
昼間のうちにレールの状態を見て回り、作業手順などの計画を綿密に立てていても、思った通りに事が運ばないことがある。
レールは鉄でできているため、温度が上がると伸び、冷えると縮む。現場に運び込む前に念入りに加工、調整しておいても、伸び縮みが影響して、うまくはまらないなどのトラブルが起きる。ミリ単位で誤差を調整し、何としても始発に間に合わせる。
重圧は大きいが、「辞めたいと思ったことはない」。日本の首都・東京を支えているという自負があるからだ。
愛媛県から上京、就職して10年以上が過ぎた。表舞台に立つことはないが、安心して、地下鉄に乗れる日常を全力で提供し続ける。(ライター・浴野朝香)
※AERA 2022年11月21日号