鳥すきやき9000円[写真=松永卓也、高野楓菜(写真映像部)、大野洋介]
鳥すきやき9000円[写真=松永卓也、高野楓菜(写真映像部)、大野洋介]
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 代表作「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」には、魅力的な江戸料理が出てくる。時代小説の名手は、稀代のグルメでもあった。池波正太郎が食エッセーで紹介した名店を訪ねる。

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■「朱塗りの箱火鉢で備長の炭を赤あかとおこし、鳥鍋で酒をのみ」

 池波は、東京・神田連雀町(現在の神田須田町1丁目と神田淡路町2丁目の一部)をよく訪ねた。

<この一角は、ふしぎに、太平洋戦争の空襲にも焼け残り、むかしの東京の町の香りを辛うじて残している」(『食卓の情景』から。以下※)

 その地の老舗「ぼたん」の建物は、昭和4年築だ。鳥すきやきは備長炭で焼かれ、肉は煮詰まっても硬くならない。締めには、

「残った汁を白米にかける“おつゆかけご飯”がおすすめです。池波先生もかけて食べていたと思います」(5代目の城一泰貴さん)

ぼたん/住所:東京都千代田区神田須田町1‐15/営業時間:11:30~20:00最終入店/定休日:日祝

鳥すきやき9000円(税込み。以下同)

■「何を食べても旨いが、私は上等の五目やきそばとネギそばが好きだ」

上五目ヤキソバ、シウマイ。値段は変更検討中のため非公表[写真=松永卓也、高野楓菜(写真映像部)、大野洋介]
上五目ヤキソバ、シウマイ。値段は変更検討中のため非公表[写真=松永卓也、高野楓菜(写真映像部)、大野洋介]

 清風楼の店頭で売っているシウマイを、池波は師匠の長谷川伸氏への土産に持って行った。

<長谷川師が「むかしの味がするね」といった清風楼の焼売は、私の大好物だ。(略)ここの焼売は豚肉と貝柱と長ネギのみを使う。そして、化学調味料や胡椒などをいっさい使わぬ>(『むかしの味』から)

 店内で食べるときは麺類を好んだようで、<五目やきそばとネギそばが好きだ。夏の冷しそばも独特のものだ>(同)と記す。

 上五目ヤキソバは、イカ、エビ、アワビ、叉焼などが豪華にのり、満足度の高い逸品。

清風楼/住所:神奈川県横浜市中区山下町190/営業時間12:00~19:30L.O./定休日:木

上五目ヤキソバ、シウマイ。値段は変更検討中のため非公表

■「黒い色の、辛いカレーで、香りのよさがたちまちに食欲をそそる」

玉子入りムルギーカリー1200円[写真=松永卓也、高野楓菜(写真映像部)、大野洋介]
玉子入りムルギーカリー1200円[写真=松永卓也、高野楓菜(写真映像部)、大野洋介]

 池波の食エッセーにはあまりカレーは登場しない。しかし、昭和26年創業の「ムルギー」についてはかなり詳しく記している。都職員時代は渋谷の繁華街で昼食を摂(と)っており、一番足繁く通ったのがこの店だった。

<小さな店だが、売りもののカレーライスに独自のものがあり、日ごとに食べても飽きなかった。ライスを、ヒマラヤの高峰のごとく皿の片隅へもりあげ、チキンカレーを、ライスの山腹の草原のごとくにみたす>(※)

 この盛り付けは、初代店主・松岡憲策さんが開業当時から始めたもの。今も変えず提供している。

ムルギー/東京都渋谷区道玄坂2‐19‐2/営業時間:11:30~15:00L.O./定休日:金祝

玉子入りムルギーカリー1200円

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