東京・渋谷のNHK放送センター
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 3年前、NHK首都圏放送センター(当時)に勤めていた管理職の男性が亡くなり、労災認定を受けたことが9月に公表された。同じ部署では2013年にもNHK記者・佐戸未和さんが亡くなっていた。悲劇はなぜ繰り返されたのか──。

【写真】生前の佐戸未和さん

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「『また起こったのか』と愕然とし、未和の過労死が全く教訓となっていないことに腹が立ちました。制度は変わっても、おおもとの組織の体質や風土は変わっていないのかなと感じます」

 こう打ち明けるのは、2013年7月、過労で亡くなったNHK記者・佐戸未和さん(享年31)の父親・守さん(71)だ。

 19年10月、NHKに勤務していた40代の男性管理職のAさんが自宅で亡くなり、22年8月、渋谷労働基準監督署から労災認定を受けたことが、9月に公表された。この件で佐戸夫妻がショックを受けたことがある。Aさんが生前、未和さんと同じ首都圏放送センター(現首都圏局)の都庁記者クラブで取材キャップを務めていたことだ。

 未和さんの労災認定時、遺族側代理人を務めた川人博弁護士は言う。

「今回、未和さんの労災認定を踏まえたNHKの『働き方改革宣言』の後に、再び同じ事態が発生しました。こうしたことはそうそう起きません」

 守さんもこう話す。

「未和が亡くなった後、私たちはNHKに対し過労死の調査・検証結果の開示を要求しましたが、局内では調査報告書さえ作っていないことがわかりました。まともな調査も検証もされていない中、NHKは働き方改革を進めてきたと言いますが、その土台は何に基づくのかと問いたいです」

 未和さんの死後、「NHKグループ 働き方改革宣言」が発表されたのは17年12月。長時間労働に頼らない組織風土をつくることなどが掲げられた。その後、本誌は21年7月にも佐戸夫妻への取材を行い、「未和さんの死を教訓として、具体的に取り組んでいること」をNHKに尋ねている。その際、広報局からは「報道現場でも、記者の勤務制度を抜本的に見直すとともに(略)選挙取材の事務作業見直しなどを進め、労働環境は着実に改善してきています」と回答があった。しかし、実際にはこの時点で既にAさんは亡くなっていた。

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