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フェミニズムに関する本はここ数年でとても増えた。日本の作家、海外の作家、学術的な本から、小説、エッセイ、絵本まで。種類が増えれば、好みの一冊と遭遇する確率も上がる。本書は敷居が低くて、ノリが軽くて、底抜けに明るいフェミ本だ。きちんと勉強してからじゃないとフェミニストを名乗ってはいけないんじゃないかと考えるまじめな方にこそ、この愉快なコラムをオススメしたい。
「かつてはフェミニストと名乗ることに抵抗があった」と語る著者は、45歳の「JJ(熟女)」になったいま「オッス、おらフェミニスト!」と宣言するまでになっている。ヘルジャパンを変えるべく、クソなものにはクソと言い、怒りのエア法螺貝をブオオー!と吹き、共感の膝パーカッションを打ち鳴らす。セクハラ・パワハラ発言を撒き散らすならず者には、プーチン顔をお見舞いし、グレッチでぶつ用意もしている(意味不明な部分があるかもしれませんが、元ネタ探しも楽しみのひとつなので、解説はしないでおきます)。独自の言語センスが炸裂する文体はドライブしまくり。なんだかこちらまで勢いづいてしまう。
愉快な本だが、重いところはしっかり重い。いわゆる毒親に育てられたことで自尊心をゴリゴリに削られた著者は、男性中心的な社会から女らしさを押し付けられ、さらにゴリゴリと削られた。彼女の半生は過酷だが、多くの女性にとって他人事ではなく、むしろ「地続き」のものだろう。女であるというだけでおかしな目に遭う。悔しいけど、今あるルールに従ってうまくやるしかないのかな。そんな諦念を覆してくれるのが、フェミニズムなのだ。
「私にとってフェミニズムは、生きるための心の杖だった。フェミニズムに出会ったことで、奪われたものを取り戻すことができた」