奪われたものを取り戻すとは、過去の自分を救済することを意味する。フェミニズムに疎い人は、この思想に癒やしの効果があることを知らない。それは実にもったいないことだ。しかもこれ、癒やされるのは女だけではない。男らしさの押しつけが苦しい男性諸君の傷も、もれなく癒える。

 ちなみに「私は難しい文章を書けないので、中高生でもサラッとサラサーティに読めると思う」と書いてあるだけあって、入り組んだ議論は一切出てこないので安心してほしい。

「私のフェミニズムは『性差別を含む全ての差別をなくしたい』『大人の責任を果たしたい』というシンプルなもの」「フェミニスト=男嫌いと誤解されがちだが、私は『男』じゃなく『性差別』を憎んでいる」

 なにも難しいことは書かれていない。なんというか、人として当たり前のことのようにも思える。しかし、この当たり前すら守られていないのが現在の日本社会なのだ。本書で紹介される数々の事例が、それをイヤと言うほど思い知らせてくれる。NGT48のメンバーが暴行を受けた事件。テレビの『ワイドナショー』でベテラン俳優が「セクハラは必要悪」と語ったこと。モデルでタレントのマリエによる過去の性被害告発。いろいろと出てくるが、芸能界のひどさが抜群に安定している(褒めてない)。

 怒れるJJは満身創痍だ。目がかすみ、膝が痛み、物忘れが激しくなる。だが本書を読むと、若い世代を元気づけ導く力はたっぷり蓄えているのがわかる。昔は怖くてできなかった異議申し立ても、エア法螺貝片手にやってのけるのがJJだ。アンチはそれを女のヒステリーと呼ぶんだろうが、怒りが尊い感情であることを知ったJJはもう止まらない。わきまえてたまるか、ブオオー!

週刊朝日  2021年10月22日号

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