撮影:夢無子
撮影:夢無子

 彼らの「鋭い視線や、ようやく生き延びられた動物のような雰囲気」を感じながらシャッターを切った。

「あれ以来、同じくらい力を持っている被写体に出合ったことがなかった」と、手応えを語る一方、この2年間、発表する方法がうまく見つからなかったという。

「それが今年8月、屋久島に行って、森の中を歩いていたら、ピンときた。屋久島の杉も相当、強いわけ。撮影したら、リンクできたのよね、この2つの写真が」

■社会に貢献しないと生きる意味がない

 世界自然遺産・屋久島には樹齢1000年を超える「屋久杉」の森がうっそうと広がる。

「雨や風、周囲の植物とも戦って何千年も生き延びてきた木だから、そういう風格が表面に出るんだよね。人間だったら、顔のしわとかだけど、屋久杉の樹皮もしわっぽかった。圧倒的な強さを感じた。それで、(あっ、これだ。しわをテーマに写真展をやりたいな)と思った」

撮影:夢無子
撮影:夢無子

 屋久島から東京に帰る途中、愛知県・知多半島にある小さな寺に立ち寄り、3週間ほど滞在した。そこでの体験が写真展の内容をさらに深化させた。

 夢無さんにはミャンマーで感じた仏教についての疑問を説き明かしたい気持ちがあった。

「シェルターで数カ月間暮らしたとき、正直、理解できなかったことがけっこうあった。それで、オタマサラ氏とけんかみたいになったこともあった」

 口論の原因は、そこに大勢住んでいた、ほかの寺から追い出された僧侶のことだった。

「彼らはテレビゲームをやったり、たばこを吸ったりして、何もしていないわけ。それで、お坊さんの社会の役割って、なんだろうな、と思って、オタマサラ氏に聞いたの。そうしたら、『自分のことは自分でしかコントロールできないから、やりたいことだけをすればいい』『もし、彼らが何もしたくなかったら、それでいい』と言う」

 僧侶であれば、仏教の知識を生かして悩める人を助けるべきであり、人は何か社会に貢献しないと生きる意味がないと思っていた。「だから、そういう、ぬるい考え方はまったく理解できなかった」。

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戦うのが当たり前の社会で育った