通常の授業のカリキュラムも、他大学の医学部とは異なるという。

「自治医科大の最大の特徴は、長期にわたる充実した臨床実習。80週という期間は全国の医学部でトップクラスです」(岡崎教授、以下同) 

 医学部で行われる臨床実習(病院の各診療科を回り、診療を体験する実習)は、5年次から行われることが多いが、自治医科大では4年次からはじまる。臨床実習に進むには、全国の医学生が受ける「共用試験」とよばれるコンピューターを用いた客観試験および実技試験に合格する必要があるが、自治医科大ではほかの大学よりも半年から1年ほど早く、3年次の最後に受ける。

 こうした速習カリキュラムを組みながらも、入学初年次の教育は手厚い。

「高校時代に物理と化学は勉強したが生物を勉強していないという学生がいるのですが、医学には生物学の基礎知識が必要。そうした学生に対応するため、医科物理学、生体構成化学、医科生物学の三つを統合した『生命科学』という科目を設けています。また演習教育に関しては、臨床医の先生に講師をお願いして、1年次から学生の臨床に対するモチベーションを上げるようにしています」

 勉強は「医学教育センター」がサポート。岡崎教授を含めた3人の専任教員が、成績下位者に対して面談を行うほか、授業が終わった午後6時から夜間補講を開く。学生を指名して症状や治療法について問い、スムーズに口頭で回答できるまで何度でもやり直すという徹底ぶり。自治医科大の名物として知られている。

 また6年生に対しては、臨床医の教員がメンターとなり、一部屋7、8人の「勉強会室」を担当・指導。月1回、学習支援部会を開いて面倒を見ている。さらに教員に対しても年10回程度のファカルティ・ディベロップメント(研修会)を開くなど、双方へのサポートを欠かさない。

「全寮制をとっていることもあり、みんなで勉強するという空気が初年次から醸成されています。ほかの大学では、どうしても孤立してしまう学生が出て、それが留年や退学につながってしまうことも。しかし自治医科大では、一度も留年せずに6年間の標準修業年限で卒業する学生の割合が、95%を超えています」 

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