
earthly flowers, heavenly colors(2017) (c)mika ninagawa, Courtesy of Tomio Koyama Gallery
■混沌から生まれるもの
女性写真家が、身近な日常を切り取るブームの中でデビューした私は、ブームとは異質の作風で、「あんなのは写真じゃない」と言われ続けてきました。だから、意識はいつも挑戦する側。それがいつの間にか、挑戦される側にまわっている。槍を持っている方じゃなくて、持たれる方になっているじゃないか。長くやってきたんだなー、と。
自分の実力を低めに見積もるクセが付いているんです。その方が仕事でがんばれる気がするので。そんな自分が、ある種の社会的な存在としてとらえられている。ちゃんとしないといけの終章は、モノトーンに近い幻想的な桜と藤の写真で終わるかと思いきや、カルトでキッチュな色彩が爆発する「Chaos Room」が待っている。
子どもが2人いるから、生活もしなきゃいけないし、食事も作っているけれども、結局、私は混沌としたものの中から何かを拾い続けているんだと思います。今回の展覧会は、「もののあはれ」で終わってもいいかな?と思っていました。そないんだ、と考え直しました。

earthly flowers, heavenly colors(2017) (c)mika ninagawa, Courtesy of Tomio Koyama Gallery
「虚構」と「現実」を行き来する展示れが普通の美しいやり方ですよね。でも、最後に赤い部屋の混沌としたノイズで、やっぱり蜷川実花だ、と思ってもらえる方がらしくていいな、と。実際、映画の小道具も含めて自宅にあるものも多くあって、あのエネルギーの塊のようなモノと色彩の中で私は落ち着くんです。最後にあのインパクトを出すことで、「なんかわからないけど、がんばろうね!」って、メッセージが伝えられるんじゃないかと思っています。
(構成/ジャーナリスト・清野由美)
※AERA 2021年10月18日号