岸田文雄首相は総選挙の勝敗ラインを「与党で過半数」と述べた。そのためには公明党との選挙協力が鍵となるが、2017年衆院選では公明党の比例票が初めて700万票を割った。コロナ禍で支持母体である創価学会の選挙運動も制約を受けるなか、票の上積みは簡単ではない。また、公明党が公約で掲げた「18歳以下に10万円給付」はバラマキではないかとの批判も上がる。公明党は総選挙をどう戦うのか。そして岸田政権とはどのような連立の形を目指すのか。幹事長の石井啓一氏に聞いた。
【写真】創価学会婦人部の怒りをかって議員辞職した公明党議員はこの人
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――自民党総裁選は岸田文雄首相が選出された。公明党の理念とは距離がある候補者もいたなかで、岸田首相で安心したところもあるのでは。
自民党の総裁選なので、われわれが良い、悪いという話ではない。岸田首相が選出されたということは自民党は「安定」を選んだのだろう。候補者の中では最もオーソドックスだった。基本的には、軽武装、経済重視の宏池会の流れにはなっていくのだろうと思う。
――公明党が目指す社会は安倍晋三元首相の清和会よりも、むしろ宏池会に近いはず。安倍-菅政権時代とは連立のあり方も変わるのでは。
安倍-菅政権時代の政高党低から、岸田政権では党高政低になるのではとも言われている。そうなれば、官邸の意向とは異なる政策が出てくる可能性もある。岸田首相は軽武装、経済重視の路線かもしれないが、自民党全体がそうなるかはわからない。
10月で自公が連立を組んで丸22年になる。その間、民主党政権の3年3カ月を除いてずっと一緒にやってきたので、首相が変わっても連立をうまく進める方法はお互いにわかっている。政策決定のプロセスをしっかりすること、選挙協力をしっかりやるという二つの軸は変わらない。
――自民党は衆院選の公約で、防衛費を国内総生産(GDP)の「2%以上も念頭に増額を目指す」と打ち出した。防衛費を倍増させるという内容だ。これに対して、山口那津男代表は「国民の理解は得られないと思う」と記者団に語っている。岸田首相自身も「敵基地攻撃能力」や自衛隊明記を含めた「改憲4項目」には前向きだ。このあたりは公明党は与しにくいのでは。