数字をまとめた大学通信調査部長の井沢秀さんが分析する。
「状況は大きく変わっていません。メガバンクは縮小傾向ですが、自動車、電機メーカーは安定しており、難関大学から採用しています。医薬品系はやはり医学部、薬学部のある難関国立大が強い傾向です」
就職情報会社ディスコによると、10月1日時点の21年卒の内定率は88.6%と高水準で、コロナ禍前の20年卒を1.9ポイント下回った程度だった。
コロナ禍で航空・旅行業界は採用を中止したり減らしたりしたところが多い。両業種に多数の人材が輩出してきた明治大学の就職キャリア支援センター、原口善信さんは明かす。
「低学年の頃から強く志望する学生たちには特にダメージが大きかったです」
同大では、例えば全日本空輸(ANA)への就職者数は20年卒16人から21年卒1人と大幅に減った。
「21年卒は『これから航空会社にエントリーシートを出そう』というときにコロナ禍で就活が中断しました。採用があったのは、JAL(日本航空)とANAではパイロット職などに限られました。航空業界に絞っていた学生は他の業界を見ようにも人気企業はすでに選考が始まっていることが多かったです」
それでも、全業種で見ると全学部就職内定率は90%以上を維持。前年度とほぼ変わらない結果となった。コロナ禍で、大学は学内ガイダンスや個別相談をオンラインで対応し、学生を支援した。
航空業界は来春の22年卒の採用もほとんどない。原口さんは「なぜ航空会社に入りたいのか」と学生たちに問いかけてきたという。
「そうすると、別の業界でも思い描いたことをできると気づきます。例えば、人を喜ばせることが好きなのであれば、エンタメ業界なら近いことができるかもしれないと、芸能事務所、ブライダル業界、テレビ制作会社、ゲーム会社に入った学生もいました」
■知名度にこだわらない
9月末に緊急事態宣言が解除され、10月から対面の面談を再開した。原口さんは言う。
「対面とオンラインを組み合わせて、より丁寧なフォローをしていきたいと思います」