(AERA 2021年10月25日号より)
(AERA 2021年10月25日号より)

 一方で87年創設の竜王戦は、原則的にどのような立場であっても最短1年で頂上にたどりつける。順位戦のクラスや段位が低い若手も「竜王戦ドリーム」をつかむことが可能だ。89年(第2期)には19歳の羽生善治現九段、2004年(第17期)には20歳の渡辺が一気に頂上に勝ち上がり戴冠(たいかん)を果たしたように、竜王戦は若きニューヒーロー誕生の舞台となってきた。

 藤井はこれまで、竜王戦でも目を見張るような活躍を見せてきた。ランキング戦では最下位の6組から始まり2組まで5年連続で優勝という途方もない記録を打ち立てた。そして今期はついに、挑戦権を争う本戦トーナメントも勝ち進んだ。

「やっぱり挑戦者決定戦(挑決)に出られた藤井さんや永瀬さんといった方が本命の候補なのかな、と思っていたので、そんなに驚きはなかったですけど」

 竜王戦でも藤井を挑戦者に迎えることになった豊島はそう語っていた。挑決は藤井が2連勝で永瀬を下し、満を持して七番勝負の舞台へと躍り出た。(ライター・松本博文)

AERA 2021年10月25日号より抜粋

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松本博文

松本博文

フリーの将棋ライター。東京大学将棋部OB。主な著書に『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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