写真家・百々武さんの作品展「生々流転 Life Eternal」が10月26日から東京・新宿のニコンプラザ東京 ニコンサロンで開催される。百々さんに聞いた。
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作品の舞台は奈良県川上村。桜の名所として知られる吉野の南東に位置する、吉野川源流の村だ。
百々さんは、この村にある文化施設「匠の聚(むら)」の職員として働きながら写真を撮影している。
「カレーやオムライスもつくるし、コテージの掃除もする。で、自分自身で写真のポスターをつくったりもする。まあ、いままでとはぜんぜん違う仕事ですね。ぼくはずっと『写真村』にいたので、最初はすごく不安定で、うちの奥さんにめちゃくちゃ当たっていたみたいです。でも、ようやく、落ち着いた」
村には大台ケ原や大峰山に続く急峻な地形が広がり、田んぼはまったくない。そんな土地で、住民の多くは吉野杉を育てる林業をなりわいとしてきた。
ここにはかつて8000人を超える村人が暮していた。しかし、1960年代以降、林業の衰退とともに人が去り、いま、村の人口は約1300人。
そんな川上村に百々さん一家が引っ越してきたのは2017年のことだった。
「40歳のとき。人生どうしようかな、と。ちょっと考えた」
■人が暮らす島の風景
若いころは、東京の有名な撮影スタジオに勤め、「毎日、テレビで見るような人たちと仕事をしていた」。
その一方で、離島を訪れ、そこで暮らす人々と風景を写すようになった。
「東京にいる間はけっこう仕事をしていたので、離島に行くことで自分の中のバランスがとれていたのかな、と思いますね。ためた資金は全部つぎ込んで、離島に行くことを繰り返した」
きっかけは、写真家として独立した03年、鹿児島県・屋久島を訪ねたことだった。
「当時、映画『もののけ姫』がすごく好きで、その原画の風景が屋久島にあると聞いて、行ったんです。そこで撮影していたら、となりの種子島でH2Aロケットが飛ぶことを知って、見に行った」