(週刊朝日2021年10月29日号より)
(週刊朝日2021年10月29日号より)

「今、在宅療養の先生は3人目です。患者である母との相性もあるし、合う先生にたどり着くまでには、それなりに時間がかかりました。利用者側からすると、先生を選ぶための“お試し診療”的なものがあれば良いのですが、今の制度では、利用するためには契約を交わさないといけないため、先生を代えるのも一苦労。在宅療養は、実際に利用してみないとわからないことが大きいという印象です」(同)

 満足いく最期を過ごすために、家族ができることはどのようなことなのか。在宅療養を決意したならば、まずは信頼できる医師やケアチームを選ぶこと。Aさんのように、複数の病院の医師に自宅に来てもらい、症状を説明した上で、どのようなケアをしてもらえるか、いろいろと聞いてみる。残された時間をどのように過ごしたいのか、希望をしっかり伝え、それをかなえてくれそうな人なのか、患者との相性も含めて見極める。

 実際にはスタートしてみないとわからないことも多いため、医師と相性が合わないと感じたら、早めに医師を代える決断をすること。訪問看護師やケアマネジャーを介して「医師を代えたい」旨を伝え、他の医療機関を紹介してもらう。しばらく経ってから担当医を代えようと思っても、症状によっては身動きが取りづらいこともあるため、早めの決断が肝心だ。

◆家ごとのルールを中心にできる

「在宅療養がうまくいく家族に共通することは?」と複数の医師に尋ねると、「ケアする側と家族とが、一つのチームのような感覚でいられること」という声が多く聞かれた。外来で通院する場合や入院時は、ともすれば医療者側に“丸投げ”の家族も少なくないが、在宅療養は患者本人の意思をかなえられてこそ、満足のいく過ごし方ができる。希望は具体的に伝え、それをかなえるためにはどうしたらいいか、ケアチームと議論しながら進められるといい。

 わからないことをわからないままに放置しない姿勢も大事だ。病院の診察室だと、医師に聞かれたことに答えるのみという人も多いが、自宅に医師が来て話す場合、リラックス感も相まっていろんな話ができる患者や家族も多いという。これまで800人を超える患者を自宅で看取った在宅医療専門医、中村明澄医師(向日葵クリニック院長)は言う。

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