※イラストはイメージです
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病院は、管理のために医療者側のルールで回っている場所とも言えますが、在宅療養は、その家ごとのルールを中心にすることができる。訪問診療という形式は、外来や入院より医師との距離が近いはず。医療者側のことをチームとして信頼してくれる家族だと、いろんなことがうまく進みやすい。『先生の言うことを聞かないと』だけではなくて、疑問に思うことはとことん聞いて、意見やリクエストもきちんと言い合える関係です。納得できるまで話をしようとする姿勢が大事です」

 その上で、受け入れる家族は寛容な心構えでいることを心がけたい。医師をはじめ、看護師やケアマネジャーやヘルパーなど、在宅療養はいろんな人が入れ代わり立ち代わり、自宅に入ってくる。慣れないうちは、どうしても負担に感じてしまいがちだが、「最大限サポートしてもらおう」という心構えで、任せる部分は任せる。特に、がん以外の病気の場合では、在宅療養の期間がどれぐらいになるかが読みづらく、5~10年単位になることもある。

「家族が犠牲にならなくてはいけない状況では、最終的にお互いが苦しくなってしまう。在宅医療や介護保険サービスを使って、お世話する側も無理をしすぎない環境をつくることが大切です」(中村医師)

 衣食住については、まずは普段どおりやってみて、不便な点や不都合が出てくれば、看護師やケアマネジャーに相談しながら改善すればいい。住環境は、本人と介護する人が動きやすく安全であるように配慮する必要はあるが、長期間の介護が続くと想定される場合を除けば、そこまで大掛かりな住宅改修をする必要はない。兵庫県で家での看取りを25年にわたって支援し続けている桜井隆医師(さくらいクリニック院長)は言う。

「家の狭さを心配する人も多いですが、ベッドで部屋が占領されたとしても、家族やケアスタッフが動ける最小限のスペースがあればなんとかなります。基本的には本人が食べたいものを食べればいいし、お酒が飲みたければ飲んでいい。したいようにして過ごすことが許されるのが在宅療養ですから、家族も『こうあるべき』といった考えではなく、なるべく患者の希望がかなえられるようにしてあげるほうがよい」

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