撮影:高野楓菜
撮影:高野楓菜

 そして、そこを疑うと更に一歩先に考えが進んで、そもそも早押しクイズを解く時に行われている思考というのは、第4章までのように分解して解き明かすことなど不可能なんじゃないか、というところにまで至りました。ようは、それっぽいこと言ってるだけなんじゃないかと。

 クイズって、「知ってる」から「正解できる」わけじゃなんです。知らなくたって、推測で正解できたりもする。カンでも正解できる。僕が『土曜はナニする!?』(フジテレビ系、毎週土曜8時半放送)で解いている企業に関するクイズとかはまさにそれですね。答えとなる事実は知らないんだけれど、ヒントと推測でこれかな?という答えを書いている、ということに過ぎない。

 逆もまた然りで、「知ってる」けど「正解できない」問題もある。ど忘れとか、解答方法を間違ってしまうとか。これはつまり、正解したことのみをもって、答えとなる知識を持っている証明にはならない、ということ。

 となると、早押しクイズを正解するまでにリアルな脳内で何が起こっているのかを、因果を持って語ること事態に疑義を呈するべきなんじゃないかなと思ったんです。なので、早押しクイズの思考過程が複雑系に当たる、という仮説を立ててみた、というのが第5章です。いやはや、これまでやってきたことはなんだったんでしょう、という。最終的にはそのあたりの意義についても書いてはいますが、結局これだけ考えてわからないんだから、早押しクイズというものは面白いなと再確認できましたね(笑)。

 ただ、それを語る上での学術的な裏付けとか、正確な言葉を僕は持っていなくて。そこはもう白旗をあげつつ、できる範囲で進めようと。複雑系研究の専門家に手伝ってもらって、極力ブレイクダウンしつつ、呈するべき疑問とか、今後この研究を進めてくれる人に向けての課題提示というのはやったつもりです。

 あくまでクイズの当事者として、早押しクイズの思考過程は複雑系なんじゃないかという所感を持った、という程度に今回の記述はとどめていますが、いつか本当にプロが研究してくれるのであれば、僕は喜んで実験台になりたいですね。できないことはできない、大きな課題として残しておきましたよ、というスタンスです。

暮らしとモノ班 for promotion
「集中できる環境」整っていますか?子どもの勉強、テレワークにも役立つ環境づくりのコツ
次のページ
「人工知能VSクイズ王伊沢」というのは?