撮影:高野楓菜
撮影:高野楓菜

――「モデル」を作り、「現実」と「モデル」を行き来することで真実に近づいていく。これこそが、「クイズを科学する」ということなのですね。本の最後には、「完璧にはまだ遠い」と書かれています。これまで、科学的なアプローチで研究がなされてこなかったからこそ、本書を機に議論や研究が深まると面白いですね。

伊沢:これが科学なのかはわからないし、おそらく正しい科学ではないんでしょう。科学らしく振る舞いはした、ということですね。筋道をつけた、というと言いすぎかも知れませんが、いずれにせよ早押しクイズが、多方面から研究されうるための俎上にはどうにかこうにか載せられたと思います。

 少なくとも、早押しクイズを解いているときの自分の感覚は記述できました。学術的なフォーマットで書けなかったことで自分の力不足を痛感しましたが、なにかこうせめて架け橋のようなものになっていたらいいなと思います。もっともっと、早押しクイズの思考モデルをブラッシュアップするべく、いろいろな人のお力を借りたいですね。

――「人工知能VSクイズ王伊沢」という対決も見てみたいですね。「AI技術の発展×クイズ」についても、今後研究が進むとクイズ界に大きなイノベーションが起こるかもしれないですね。

伊沢:人工知能には、僕は勝てないでしょうね。どういうタイプのものかによりますが、クイズAIの研究は各所で進んでいるようなので。クイズを作るAIならまだ僕のほうがいい作品を作れると思うんですが、ちゃんとそのあたりの研究をやられている方も複数知っているのでうかつなことは言えません。解く方は、僕よりずっと正確で強い、機械のようなプレーヤーを知っているので、僕は人工知能に勝利した囲碁棋士・イ・セドル氏には少なくとも今はなれないですね。そういう人たちとAIが戦うなら、解説くらいはやりたいな。

――本文は3~5回程度、何周もして書き直し、難航した章に関しては15回も書き直しをされたと聞いています。ほぼ毎日、夜中や明け方に原稿を上げていた2年だったとか。

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