撮影:高野楓菜
撮影:高野楓菜

――クイズの作問における構文とアイディアの絶妙な組み合わせ方、ホスピタリティの作り方など、具体例を交えて丁寧に解説されている箇所にも感銘を受けました。クイズの作問が、いかに創造的な作業であることが読み取れます。

伊沢:もうほんとは日常のメモとか、そういうのでもいいんです、クイズの作り方なんて。ああしろこうしろを強いるつもりはない。ただ、一本規矩があると、作るときにやりやすいよねということで、大会とかで行う作問作業を、なるべく分解してお見せした、というのが今回のコンセプトです。

 そもそもクイズは誰か問題の作り手がいてはじめてゲームとして完成するものなので、作り手のことを考えるというのはクイズというゲームを攻略する上でひとつ重要な要素だと言えます。なので、「なぜクイズ王は早く押せるのか」を語るならば作問の話は欠かせないんです。

 作り手の立場を推測するというのはテレビクイズを攻略する上で昔から重要な要素とされていましたが、今回はそれをより分解して、ステップを踏んで語ったつもりです。丁寧にやった結果として、主眼はあくまで「早く押すために」というところにありますが、問題を作ってみたいという人へのひとつのマニュアルにもなるようなものにもなっているはずです。

――さらに「早押しクイズ=要素還元的に捉えることのできない、複雑系の世界」として論が展開されていきます。早押しクイズには、人間の思考の不安定さというものがついて回るがゆえに、「実は、正確な分析が困難だ」という「ちゃぶ台返し」が起こっていますね。

伊沢:ここは、今回やるならどうしても触れないといけないなと思ったというか、厳密性にこだわるなら言及しないといけなかった部分ですね。そもそもクイズが解けた、早押しに勝ったという結果がどのように発生するのかを考えた時、第4章までは自分の脳内で起こっていることをなるたけ正確に書き起こしてきたつもりだったけど、その翻訳の過程でいろいろなものが捨象されてしまったり、それらしい因果関係に押し込めてしまったりしていて、実は間違ったことを書いているんじゃないか、というのは当然の疑いとして生じたわけです。

暮らしとモノ班 for promotion
「集中できる環境」整っていますか?子どもの勉強、テレワークにも役立つ環境づくりのコツ
次のページ
クイズは「知ってる」から「正解できる」わけではない