川勝知事は山崎氏への応援に何度も入り、7月の熱海市土石流災害を例にあげ、岸田政権をこう批判していた。
「熱海の土石流の体験を無にしてはならない。大都市をつくり、効率をあげるというのが自民党であります。本当に許していいのか」
「岸田さんは首相就任のご祝儀で支持率はあがるはずが、現在40%台。相場が下がってきた。静岡県の自民党の国会議員には大臣もいない。役に立たない。みなさんでお灸をすえましょう」
山崎氏も「岸田さんが首相になって、国交相にリニア(新幹線)の整備を指示した。驚天動地だ」と自民党批判を展開した。
山崎氏のポスターには「私も応援します、川勝平太」というステッカーが終盤で貼られるようになったのも追い風になったという。前出の立憲民主幹部はこう語る。
「川勝知事が自民党にNOを突き付けたことが大きな後押しになった。それが山崎氏の逆転につながった」
痛い黒星となった参院の静岡選挙区の補選。しかし、原動力となった川勝知事は衆院選で立憲民主党など野党に積極的な支援表明をしているわけではない。衆院選で野党に風が吹くとは言い難い状況だ。前出の官邸関係者はこう語る。
「衆院選への影響と動揺を最小限にすべく、『静岡はリニア問題というドメスティックな争点があったからで、影響は限定的』と冷静を装う声が相次いでいます。しかし、岸田政権は民意を真摯に受け止める必要があります。選挙責任者たる甘利明幹事長の手腕への疑問符も出はじめています」
自民党で20年以上、政務調査会の調査役を務めた政治評論家の田村重信さんはこう分析する。
「衆院選を控え、静岡の補選で油断があったと感じている。初陣で負けるというのは、トップも部下も意気消沈する。衆院選の真っ最中にあった補選でのまさかの敗北は、岸田政権にとって痛すぎる。静岡は別だという考えなら、衆院選も危うい。まさに直結しかねない」
発足以来、支持率が伸び悩む岸田内閣。