■無収入なら保険料免除

 問題は国民年金の保険料支払いが困難な層だ。会社員でも60歳定年の会社は多いし、自営業やフリーランスも不安を抱く人は多いだろう。どう対処すればいいのか。中嶋さんは言う。

「60歳で定年になって、もし働いていなければ無収入ですよね。無収入や低所得の人は保険料が免除、減免されます。正確に言えば、45年化がまだ決まったわけではないため、免除の方針は示されていませんが、常識的に考えれば60歳までの期間と同様の措置がとられるはずです」

 国民年金は加入義務があり、無収入でも支払わないといけないと思っている人は少なくないだろう。しかし、現行制度は経済的に納付が難しい場合、保険料の納付が免除・減免される。ただ、5年延長分に関しては「例外」も予想される。

「現在の制度だと、保険料が全額免除になった場合も、納めた場合の半分は受給できます。しかし、仮に『5年延長分の国庫負担なし』で決着した場合、60歳からの5年分については保険料を支払っていない人は受給額に全く上乗せされない形になる可能性が高くなります」(中嶋さん)

■生涯受給できて心強い

 高齢になるほど頼りになる年金。公的年金制度の最大のメリットは「終身給付」であること、と強調するのは個人資産を扱うコンサル「生活デザイン」のファイナンシャルプランナー山田茂睦さんだ。

投資も大事ですが、老後の生活で最も心強いのは生涯受給できる年金です。障害年金や遺族年金も含まれる国の年金制度のメリットは『老後』だけではありません。収支の損得勘定ではなく、保険と捉えるべきでしょう」

 山田さんは「45年化」の影響を受けるのは、夫婦2人分の基礎年金の保険料を負担している自営業者だと指摘する。その場合、対策の一つに挙げるのが「法人化」だ。

「法人化すれば厚生年金に切り替わり、年収の18.3%を負担する形になりますが、配偶者が扶養内であれば、第3号被保険者になるため保険料負担は世帯主1人分で済みます。基礎年金だけでは老後の生活はより厳しくなります。基礎年金の保険料を夫婦で毎月3万円強支払うより保険料が高くなったとしても、厚生年金の2階部分を生涯受給できるメリットはあります」

 法人化の手続きは初期費用で約30万円かかるが、節税効果も期待できる。法人化による節税メリットの目安は所得1千万円以上だという。(編集部・渡辺豪)

AERA 2022年11月21日号

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