19年11月9日、「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」の祝賀式典で目元をぬぐう皇后さまと天皇陛下 (c)朝日新聞社
19年11月9日、「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」の祝賀式典で目元をぬぐう皇后さまと天皇陛下 (c)朝日新聞社


——コロナ禍で皇室の活動が見えにくくなっている。皇室の存在感は保てるだろうか。

■天皇制自体への説明

河西:「公的行為」を増やすことで、象徴天皇への支持を高めていったのが平成という時代でした。当初、皇室への無関心層が増えていて、国民と苦楽を共にしないと天皇制が立ち行かなくなった。その危機感の中で平成のお二人は「ご公務」を増やした。しかし形骸化もでてきたところに、コロナ禍が重なったという面もあると思います。

木村:天皇制の目的を何ととらえるか、ということだと思います。そもそも天皇制自体、憲法の立て付けとしては少しおかしいんです。国民主権の国家なのに、別に天皇がいるわけですから。つまり天皇制があること自体に説明が必要で、説明の仕方は大きく二つあります。

 一つは、天皇が持っている権威が国民主権下で乱用されないようにする。「危険物管理」のような考え方です。例えば衆院選挙で天皇が勅命を出し、公認候補を決めるとなると、それはよくない。つまり天皇家の権威は日本政治における危険物だから、国民が管理する。国民の代表である国会が選んだ内閣が管理し、国事行為だけをさせる。この説明では、天皇は何もしない方がいい、となります。

 もう一つは、国民主権が頼りないので補完するために天皇制を置いておくという説明です。日本国憲法下で、首相、最高裁判所長官の任命、法律の公布……みんな天皇がします。政治権力は統治の内容とは別に、その決定に従うべき理由を示す必要があります。なぜ従わなければいけないのか。この問いに憲法は、「国民の代表が決めたから」と、「天皇陛下がしたこと」という二つの答えを用意している。

 この理屈でいくと、天皇は国民の尊敬を集める存在であることを追求する必要が出てくる。すると、天皇の公的行為は拡大していきます。国民が「天皇はよくやってくれたから、従おう」と思う振る舞いをたくさんしなくては、となるわけですから。

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