今、日本のSNSでは精子を売買するやり取りがあふれている。高学歴をうたい、提供の際には性行為をする場合もある。背景には、独身女性や同性カップルで子供を産みたい人が増えているという実情があった。精子ビジネスの現在を追った。
【「精子提供.jp」のホームページ、ツイッターには高学歴をうたう精子提供の呼びかけも】
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<東京工業大学に現役合格し、東京大学の大学院に進学しました。いくつかの会社勤務を経て、欧州と米国の企業で勤務しました>
妊娠を望む女性に精子の提供を呼びかけるホームページ「精子提供.jp」には、ドナーの個人情報が公開されている。身長や血液型はもちろん、旅行などの趣味についての記載もある。
ホームページを運営するのは西園寺優さん(仮名、30代前半)で、経歴は自らのもの。2009年に、知人から頼まれたのをきっかけに、これまで100人以上の女性に精子を提供してきたという。西園寺さんは言う。
「3、4日に一人ぐらいの割合で相談が来ますが、実際に精子を提供するのは全体の2割程度。すべての女性が子供を産んだ後に報告してくれるわけではないので正確には把握していないですが、40~60人ぐらいの子供が生まれたと思います」
提供の仕方は宅配、シリンジ法、タイミング法の三つ。宅配は24時間以内に依頼者に精子を届ける。シリンジ法では、針のない注射器のようなものに精子を入れて、女性が自ら膣内に精子を注入する。タイミング法は排卵日に合わせて実際に性行為をする。費用の多くは交通費などの実費のみで、数万円程度だという。
「経験的には、20代の女性はシリンジ法でも妊娠する可能性が高いので、そのことは伝えます。ただ、30代後半から40代の方は確率を上げるためにタイミング法を取る方が多い。全体の約半数の方がタイミング法を選択します」(西園寺さん)
外国では、精子のドナーが、子供ができた後に養育費を請求されたり、相続権を求められたりすることがある。西園寺さんは既婚者で、妻と2人の子供がいる。将来的な心配はないのか。