※写真はイメージです (GettyImages)
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「今までに精子を提供した女性とトラブルになったことはありません。精子を提供する時には、事前に依頼者の経済状況や周囲に家族の助けがあるかなどの話も聞き、子供を育てられる環境にある人に限って提供しています。妻も私が精子の提供をしているのは理解してくれています」(同)

 現在、インターネットで「精子提供」といったキーワードで検索すると、提供する「ドナー」が数多くヒットする。また、精子の提供を求める女性の声もあふれている。

 こうした動きの背景には、日本社会での家族形態が多様化していることがある。結婚せずに子供を産むシングルマザーは、00年の約6万3千人から15年には約17万7千人に増えた。15年間で約3倍の増加だ。同性カップルの権利を求める声も高まり、今後、レズビアンカップルで子供を産みたいと考える人も増えていくと思われる。

 生殖医療に携わる慶応義塾大学医学部の田中守教授(周産期学・生殖医学)は言う。

「シングルマザーや同性カップルでも、お子さんを望む女性の妊娠は医学的、技術的に可能です。しかし、法制度が確立していないため、公的に実施できない状態が続いています。本来、精子の提供は臓器提供と同じで厳格なルールが必要ですが、日本では現実に法制度が追いついていません」

 20年12月には民法の特例法(生殖補助医療法)が成立し、不妊治療のために夫婦以外の第三者の精子や卵子を使って生まれた子供でも、親子関係が認められることになった。だが、対象は法律上の夫婦のみ。独身女性や同性カップルによる非配偶者間人工授精(AID)に関する法整備は先送りされた。

 日本産科婦人科学会によると、国内でAIDの実施登録をしている医療施設は12カ所。それもドナー不足で5、6施設しかAIDを実施できていないのが実情だ。法律上の夫婦以外は対象外のため、人工授精を望む独身女性や同性カップルは、精子の“闇取引”に手を出さざるを得ない。

 独協医科大学の岡田弘特任教授の調査によると、日本語で精子の提供を呼びかけるホームページやブログは少なくとも140あるという。そのうちの92%が性感染症の検査や同意を求める契約書などに不備があり、提供を受ける人への情報開示が不十分だと指摘している。

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