菅前総理のおかげでせっかく挽回したにもかかわらず、また世界から出遅れてしまいそうなのが3回目の接種です。
新型コロナウイルスワクチンの感染予防効果は、2回の接種完了からより時間が経過した人ほど弱まっていることがイスラエルのYair博士らから報告されています。イスラエルは2020年12月からワクチン接種が開始された国です。イスラエルでのコロナ感染のほぼ全て(98%超)がデルタ変異株に起因するようになって以降の2021年7月11日から31日の新型コロナウイルス感染率が、ワクチン接種をより早くに済ませた人の方がワクチン接種からより日が浅い人に比べてより高かったと言います。
このように2回目の接種から時間が経つにつれて免疫が低下してしまうので、再び免疫を高めるために3回目の接種が必要になります。ブースター接種ともいいます。すでに、イスラエルフランス、ドイツやシンガポール、イギリスやアメリカ、ブラジルなどではブースター接種が開始されています。
Pfizer/BioNTech製の新型コロナウイルスワクチン(BNT162b2)の3回目の追加接種(ブースター接種)の予防効果が先日発表されました。2回のBNT162b2接種を済ませた16歳以上の1万人超が試験に参加し、先立つ2回の接種と同量のBNT162b2のブースター投与、またはプラセボ投与に1対1の割合で割り振られました。ワクチン投与から7日後以降の新型コロナウイルス感染症の発症数はBNT162b2ブースター投与群では5人、プラセボ群では109人であって、過去に新型コロナウイルス感染の既往歴がない人のBNT162b2ブースター投与後のCOVID-19発症はプラセボに比べて、なんと95.6%少なく済んだと言います。
12月から医療従事者に、年明けには高齢者を対象に3回目の接種を始める方向で検討していると報じられています。しかしその時期では、昨年のように再び新型コロナウイルスが流行しているかもしれません。本来、ワクチン接種は流行する前に接種し、免疫を高めることが大切です。すでに、2回接種していても時間経過とともに免疫が低下することは報告されているのですから、流行が落ち着いている今こそ、まだ1回目や2回目の接種と並行して、早く接種を終えた人から3回目の接種を開始する必要があるのではないでしょうか。
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員