藤井は1日目でペースをつかんだ。はっきり優位に立った2日目では、踏み込むべきところは踏み込んで、一気に豊島陣を攻略していく。

「本局はけっこう一方的になってしまった」(豊島)

 終わってみれば短手数70手。藤井の快勝となった。

食事、おやつのセレクトは自ら「力戦派」と分析する藤井三冠。竜王戦第2局1日目の午前、前例にない「くま最中」を選び、「かわいい」と話題となった(photo 日本将棋連盟提供)
食事、おやつのセレクトは自ら「力戦派」と分析する藤井三冠。竜王戦第2局1日目の午前、前例にない「くま最中」を選び、「かわいい」と話題となった(photo 日本将棋連盟提供)

■後手番で「ブレーク」

 七番勝負は一局ごとに先手と後手が入れ替わる。第1局では先手番の藤井が逆転で勝利をつかんだ。続く第2局は豊島先手。現代将棋の番勝負で、わずかに有利な先手番で勝つことは、テニスでいえばサービス側がゲームを「キープ」するようなもの。逆に言えば後手番が「ブレーク」を果たすとシリーズのゆくえを決定づける可能性も大きい。藤井は第2局で完璧なブレークを果たした。

「ちょっと準備不足だったかなと思います」

 豊島は敗れた直後、そう語った。竜王防衛戦という大きな舞台に臨むにあたり、もとより棋界トップクラスの研究家である豊島が事前研究を怠るはずなどない。昨年の開幕第1局、豊島は羽生善治挑戦者(51)を相手に超急戦策でのぞみ、52手という記録的な最短手数で勝利を収めている。そんな豊島に「準備不足」と言わしめるほどに、本局の藤井の強さはきわだっていた、というべきだろう。(ライター・松本博文)

AERA 2021年11月8日号

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松本博文

松本博文

フリーの将棋ライター。東京大学将棋部OB。主な著書に『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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