再生可能エネルギー関連も恩恵を受けそうだという (GettyImages)
再生可能エネルギー関連も恩恵を受けそうだという (GettyImages)

◆労働集約型産業 人件費が拡大?

自民党衆院選挙公約で、新しい資本主義や、農林水産業を成長産業にすること、日本列島の隅々まで活発な経済活動がいきわたることなどを掲げた」(鈴木さん)

 このため、鈴木さんは農業分野で農薬や肥料を手掛ける「OATアグリオ」などにも注目している。

 一方、恩恵から外れる業界や企業はないのだろうか。岸田首相が所信表明演説で、企業決算の四半期開示の見直し問題に言及したと指摘するのは、広木さん。企業には四半期開示が負担で、世界的に年2回の開示に戻してほしいとの声も多く、もし見直しとなれば、「一番影響を受けるのは投資家や市場」(広木さん)。

 もう一つは、岸田首相が総裁選で言及した金融所得課税の強化の問題。その後、実施を見送る姿勢を示したが、前出の市場関係者は、特に証券会社や投信販売をしている銀行への影響が大きいとみている。

 岸田首相はまた、成長の分配を重視しており、賃上げに意欲を示している。再配分の財源として、狙われるところが出てくる。中小のサービス業や建設現場、非正規従業員が多い労働集約型の産業で人件費が増大する懸念がある。

 小林さんは「市場では岸田首相の実行力に疑問符がついている」と話す。自民党幹部には首相とスタンスの違う人が少なくなく、党内調整が難航しているのではという。「岸田首相はみんなの意見をよく聞くあまり経済対策が総花的になり、とがったものがないかもしれない」(窪田さん)

 自民党の甘利明幹事長はエネルギー政策で原子力発電を重視する姿勢とみられており、窪田さんは再生エネ関連にマイナスになるかもしれないと懸念する。そうした方向性が見えてくると、「市場で失望売りになる可能性はある」(同)。

 岸田首相が経済対策でどんな具体策を打ち出し、指導力を発揮していくのか、市場関係者は注視している。(本誌・浅井秀樹)

(週刊朝日2021年11月12日号より)
(週刊朝日2021年11月12日号より)

※記事は甘利明氏の自民党幹事長辞任前に取材し、まとめました。

週刊朝日  2021年11月12日号

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