衆議院総選挙が終わった。今後、投資家が注目するのは、岸田文雄首相が打ち出す具体的な経済対策だ。それにより、どんな株が上がり、下がるのか。株式市場の専門家たちに、期待される政策や注目する銘柄などを聞いた。
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岸田首相は今後、どのような具体的な経済対策を打ち出すのか。自民党総裁に就任した9月下旬、年内に数十兆円規模の経済対策を策定すると表明。10月初旬には内閣基本方針を発表し、国民の生活を守り、所得を増やす政策を掲げた。
具体策はこれからだが、株式市場はあまり期待していないようだ。
「安倍(晋三)政権のときのような高揚感は市場にない」と、松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは話す。自民党総裁選で「金融所得課税の見直し」を公約に掲げるなど、市場にフレンドリーでないからという。
「成長と分配の好循環といった言葉だけがあり、中身がまだない」と話すのは、マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆さん。それまでの政権の反動で官僚支配が強くなり、「昔の官僚主導が色濃く出る」(広木さん)とみる。
総裁選のあった9月は、河野太郎候補が構造改革を進めると期待した海外投資家が買っていたとみられ、「日本株は大相場」だったと言うのが、フィスコの小林大純チーフアナリスト。海外市場の取引が始まる日本時間の夕方になると、日経平均先物が「いきなり急騰した」(小林さん)。ところが、岸田総裁に決まった9月下旬は株式相場が下落。「海外投資家が売ってきていた。期待が高くないのではないか」(同)
それでも、経済対策が具体化すれば、恩恵を受けるとみられる銘柄はある。ヒントになるのが岸田内閣が基本方針に掲げた五つの政策。新型コロナウイルス対策、成長と分配や新しい資本主義、東日本大震災からの復興と国土強靱化などだ。
このうち、経済政策の柱となる成長戦略に、科学技術立国、デジタル田園都市国家構想などがある。分配戦略には、働く人への分配機能強化、中間層の拡大などを掲げる。