西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、前年最下位から優勝を果たしたヤクルトとオリックスの勝因を解説する。
【写真】25年ぶりのリーグ優勝を決めて喜ぶオリックスの選手たち
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10月26日にヤクルトが6年ぶりのリーグ優勝を決め、同27日にはオリックスが25年ぶりのリーグ優勝を決めた。ともに前年は最下位。セ、パともに前年最下位チームが優勝するのは史上初のことだという。こんなこと、予想できるはずがない。選手個々を見ても、どれだけフレッシュな選手が出てきたか。
最下位だからこそ、できることがある。それはチームを一度壊して、フラットな目線でチームを作れること。ただ、すべてゼロからスタートを切ることなんてできない。その点、両チームには核となり得る選手がいた。
ヤクルトなら、村上宗隆と山田哲人という「打」の核がおり、オリックスには吉田正尚と山本由伸という投打の軸である。12球団見渡しても、うらやむような強固な存在がおり、その選手を中心に歯車を回転させる。ただ、ヤクルトの高津臣吾監督、そしてオリックスの中嶋聡監督が素晴らしかったのは、適材適所の起用であり、2軍選手までも見渡しての用兵だった。
ヤクルトなら、投手陣をどう構築するか。例えば先発であれば、直球の球威が足りない投手でも、救援1イニングなら3~5キロ球速が増し、使えるようになる投手だっている。そういった投手には、連投させて球威が衰えないよう気を配る。先発だって、絶対的な存在がいないなら、人数を用意して、ベストで投げられるように間隔を空けた。
オリックスは、吉田正尚が終盤故障のアクシデントがあったが、杉本裕太郎が素晴らしかった。彼のスイングを見ていると、ボールとバットが離れたとんでもない空振りはするけど、自分のスイングは崩れなかった。ボール球を追いかけることも減ったように思う。優勝争いのプレッシャーにも負けなかった。心の強さも感じた。
今の野球は、7割の力で抑えられるほど、選手間に圧倒的な力量差はない。コンディションを整えられなければ、簡単に力関係はひっくり返ってしまう。今年はベテランの選手が軒並み成績を落としていたが、それだけ「心技体」のレベルの高さが求められるようになったということだろう。