しいたけ. 変わってきましたよね。僕はいわゆる「リア充」とか「コミュ力」って、演技力を完璧にすれば手に入るものだと思ってるんです。演技って、うまく世渡りしたり、傷つかないためのものでもあるから。でも、その演技の壁をぶち壊された先にしか、幸せってないような気がして。自分自身の人生を振り返ってもそうですけど、幸せって必ず痛みを伴うもの。それまでのやり方が通じなくて、全部ぶち壊されて、ぼろぼろになって用意した一つの言葉や贈り物が受け取ってもらえた時に、幸せが現れる。だから「つい怖い顔になってしまう」という水野さんのお悩みも、水野美紀という人の演技が壊されて、なんのかっこつけもできない、何の武器も持たずにただ素っ裸で立っている、そういう状態だったり表情なのかもしれません。でもそれは、信頼している人の前、戦友の前だけでできる表情なんだと思うんです。

水野 みんなにいい顔しようなんて、そもそも絶対無理ですよね。いろんな性格の人、いろんなタイプの人、いろんな好みの人がいる中で、みんなに好かれるなんて無理。この仕事もそうなんです。ある意味、イメージを売っていく仕事ですけど、万人受けなんて無理ですね。気にし始めたらきりがないし。昔は自分がテレビに出ても、誰が見てどう思ってるかなんて知りようがなかったのが、今はSNSで目に入ってきちゃう。きっと占い師さんに相談しに行きたくなるのは、自分のつらいことを話して分かってもらえる、そういうことあるよねって共感してもらえることに、人がすごく救われるからだと思うんですよね。

○みずの・みき/1974年生まれ、三重県出身。女優。「踊る大捜査線」シリーズをはじめ、映画、ドラマ、CMなど、数多くの作品に出演。2016年に結婚、17年に第1子を出産。

○しいたけ./占い師。作家。早稲田大学大学院政治学研究科修了。週刊誌AERAで「午後3時のしいたけ.相談室」連載中。著書に『みんなのしいたけ.相談室』『しいたけ.の小さな開運BOOK』など。

(構成/編集部・高橋有紀)