「プロ化して以降、サッカーも競技人口が増えているものの、サッカー大国とは言えません。メッシやクリスチアーノ・ロナウドを輩出しているポルトガルやアルゼンチンでは、圧倒的にサッカーが人気ですから。もし、大谷選手がドイツやイタリアで生まれていたら、サッカーをやっていた可能性も十分ありますし、それこそクリロナみたいな選手になっていたかもしれない。逆に、メッシやクリロナが日本で生まれていたら、野球をやっていたかもしれないですよね」(北條氏)
北條氏によれば、スターの存在が、その競技のさらなる活性化を促してきたという。
「ブラジルやアルゼンチンでは昔から、ペレやマラドーナなどのスーパースターが輩出されてきて、彼らがアイコン役となって人材を呼び込んできた。その点、日本の子どもたちは大谷選手の活躍を見て、『俺も大谷みたいになりたい』と言って野球を始める人が増えそうですよね」
サッカー解説者のセルジオ越後氏にも話を聞いた。セルジオ氏は“プロ入り前”の段階である「高校スポーツ」に着目。高校スポーツを取りまとめる機関は文科省だ。セルジオ氏は「文科省の管轄のままでは、強くならない」と指摘する。
「日本の学校には、“選手”がいない。皆、“生徒”なのです。文部科学省が推進している以上、いかに勉強させるかが最優先ですし、スポーツは二の次。6・3・3制度の中で生徒としてスポーツをしている限り、いつまでたっても選手にはなれません」
ならば、クラブチームに入ればいい、という指摘もある。
「ですが、日本は学歴社会。中学まではクラブでも、高校からスポーツ推薦で私立高校に入学し、大学の推薦枠を狙う人も多い。日本ではプロになれなかった場合におびえて、学歴をキープする人も多いのです。中学卒業後にブラジルに渡った三浦知良さんのように、早くからレベルの高い海外に出ることも成長につながりますが、海外に出て成功するのは一握りなので、みな尻込みしてしまう。Jリーグができてどれだけ年数がたっても、学校に依存している現状ではダメ。特に国際競争力の激しいサッカーでは、文科省が仕切っている限り、100年経っても外国に追いつくことはないと思います」
セルジオ氏は高校サッカーをめぐる組織の在り方についても手厳しい。こう指摘する。