■お金から解放される
NPO法人クロスフィールズ代表理事・小沼大地さん「新たなパラダイムシフト示す」
私が青年海外協力隊員として中東シリアに赴任したのは2005年です。GDP(国内総生産)は低くても「幸せ度」は高い。そんな生活を現地で体験し、価値観の物差しが大きく変わりました。お金よりも人と人がつながっていることがもたらす幸福感。お金ではない「豊かさ」について教えてくれる本を紹介します。
『チェンジメーカー』はシリアで読み、何のために仕事をするのかを考えさせられました。社会課題の解決に人々の意識が向き始めた時代の変化を的確に捉え、日本で社会起業家ブームの火付け役になった本です。
『経営リーダーのための社会システム論』は、2年前まで通っていた大学院大学「至善館」で、私が最も影響を受けた宮台真司さんの講義のエッセンスが詰まった本です。「底が抜けてしまった」日本の社会構造のゆがみを指摘し、地域社会における人と人とのコミュニケーションを見直す必要性が説かれています。ビジネスのあり方だけでなく、社会の仕組みそのものを変えるにはどうすればいいか、という視座は刺激的です。
10冊はいずれも、資本主義の限界が指摘されている今、新たなパラダイムシフトを示唆してくれます。中でも『世界は贈与でできている』『ビジネスの未来』『ゆっくり、いそげ』の3冊は、ビジネスの価値がお金を稼ぐことから、人や社会に対して利他的にアプローチする贈与的な価値にシフトしていく近未来の展望が語られています。
私にとって読書の醍醐味は思考を深め、言語化していくプロセスにあります。日々の業務や生活でなんとなく感じていることと、本の内容とを接続することで、より考えが深まっていくと感じるのです。
(構成/編集部・渡辺豪)
■「豊かさ」を考える
社会起業家ブーム火付け役に
『チェンジメーカー』/渡邊奈々/日経BP
日本の社会構造のゆがみを指摘
『経営リーダーのための社会システム論』/宮台真司、野田智義/光文社
『私たちはどこまで資本主義に従うのか』/ヘンリー・ミンツバーグ/ダイヤモンド社
『世界は贈与でできている』/近内悠太/NewsPicksパブリッシング
『ゆっくり、いそげ』/影山知明/大和書房
『ビジネスの未来──エコノミーにヒューマニティを取り戻す』/山口周/プレジデント社
『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 01──ソーシャルイノベーションの始め方』/英治出版
『協力のテクノロジー』/松原明、大社充/学芸出版社
『「参加の力」が創る共生社会:市民の共感・主体性をどう醸成するか』/早瀬昇/ミネルヴァ書房
『100万回生きたねこ』/佐野洋子/講談社