
豊島らしい辛抱のよさではあったが、形勢の針は次第に藤井よしへと傾き始める。
互いに相手陣に飛車を成り合っての終盤戦。一手でも誤ればすぐに逆転する終盤を、藤井はほぼノーミスで突き進んでいく。最後はさえた攻防手で、藤井がきれいな一手勝ちを収めた。
「砂蒸し風呂を楽しみにしていると言っていたじゃないか」
そう感じた観戦者もいただろう。藤井は開幕前、第6局が行われる鹿児島県指宿市で名物の砂蒸し風呂が楽しみと言っていた。しかしそこまで行かないうちに、藤井がシリーズを終わらせてしまう可能性もある。(ライター・松本博文)
※AERA 2021年11月15日号より抜粋