倉橋教授が緊急事態宣言明け後の10月5日に発表した最新のシミュレーションでは、来年1月後半以降に「第6波」の到来が予測される。その規模は、私たちの選択する対策次第では夏の「第5波」をも上回る。

(週刊朝日2021年11月19日号より)
(週刊朝日2021年11月19日号より)

 仮に、3回目接種の対象が高齢者や医療従事者のみに限定され、感染が拡大しても人流が制限されず、ワクチンパスポート(接種証明)の利用による飲食店やイベントへの入場制限なども行わない「最悪のシナリオ」では、東京都で1月後半以降に感染者数は急拡大し、ピークとなる4月末には1日に8万人近い新規陽性者が出るという驚きの結果になる。ただし、実際に感染が拡大すると政府の施策に関わらず「自粛」の効果で人流は減ることなどから、この数字は「あまり現実的ではない」(倉橋教授)という。

 倉橋教授が現実的なシミュレーションというのが、ともに、繁華街の夜間滞留人口は今夏の150%増、新規陽性者が千人を超えた時点で飲食店の営業制限などで人流を抑制する想定だ。

 1つ目は3度目のワクチン接種を全年代に実施し、接種証明が利用された場合で、新規陽性者数のピークは2月下旬(1283人)。2つ目は高齢者・医療従事者だけに3度目のワクチン接種を行い、接種証明を導入しなかった場合で、5月のピーク時には第5波を上回る7千人超の新規陽性者が出る。また、これらは2回目の接種から8カ月後にブースター接種をした想定だが、これを6カ月後に前倒しすると、ピーク時の1日あたりの新規陽性者数は最少で198人まで減るという。

「これまでの行き当たりばったりのワクチン政策ではなく、誰にどういう順番でどういうペースで行うか、計画性を持って実施することが大事。接種証明の活用法や人流追跡アプリなどIT化を進めることで、第5波と同じ轍を踏まないように政策を進めてほしい」(同)

 Go To トラベル再開以外にも、政府にはやるべきことがたくさんあるはずだ。(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2021年11月19日号