同記事では、今季大谷と本塁打数を争い、史上最年少で40本塁打以上を放ったゲレーロJr.が優秀な打者であることを認めつつも、大谷が二刀流として残した功績をゲレーロJr.が埋めることは難しいと指摘し、「大谷がア・リーグMVPを獲得するだろう」と予想した。同記事で述べられているような予想は他のメディアでもよくみられる内容ではあるが、この記事の興味深いところは、カナダのメディアが主張しているというところにある。

 一般的に、現地メディアは地元チームの選手に期待する予想を述べる。実際、ゲレーロJr.が所属するブルージェイズの地元紙からは、大谷よりもゲレーロJr.を推す声が出ていた。しかし、『ザ・スコア』はカナダに本拠地を構えながらも、地元チームのゲレーロJr.ではなく、大谷の方がMVPにふさわしいと主張しているのだ。カナダのメディアですらそう述べざるをえないほど、大谷の活躍は圧倒的だったということだ。ではなぜ大谷のMVP獲得がこれほどまでに期待されているのか、同記事にはその詳細が次のように書かれている。

 まず、大谷とゲレーロJr.の決定的な違いはWARの数字にあることが指摘されている。WARとは、「Wins Above Replacement(代替可能選手を上回る勝利数)」と呼ばれる指標で、打撃や走塁、守備、投球などの能力を総合評価し、その選手がどれだけ貢献しているかを表す数値のことである。アメリカでは『ファングラフス』と『ベースボール・レファレンス』というデータ分析サイトがそれぞれの数値を提供しており、両者の数値には若干の違いがあるため前者は「fWAR」、後者は「rWAR」と表記が分けられている。ポジションに関係なく評価できることから、米球団もこの数値を重要視し、選手の適正年俸の算出に役立てている。

『ファングラフス』が提供する数値でみると、大谷は5.1 fWAR、ゲレーロJr.は6.6 fWARであったと同記事には書かれている。また同データサイトの評価基準によれば、その数値が6以上であればMVP級であると言われており、その通りであればゲレーロJr.の方がその数値は高い。しかし、大谷の5.1という数値は「打者のみ」の数値だ。一方で投手としての数値は2.9であり、合計すると8.0 fWARになり、ゲレーロJr.を大きく引き離しているのだ。(記事掲載時)今季、現地メディアが大谷の活躍に驚愕していたのもこの数値こそがその理由だ。(なお、今季の最終的なfWARは打者が5.1、投手が3.0である)

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