横ではKがずーっと喋っている。自分の年末年始について、自分の家族について……Kはかなりの声量女子だ。「あとどれくらいすかね、Kさん?」「もう半分ってとこです」「いや、まだ100です」と営業部の人から訂正が入った。「まだ全然じゃない!」とK。いやこっちのセリフだよ。
200、300、400……K以外の人が口をきかなくなる。トイレから帰ってきたKが言った。「静かですね」 あんたが居なかったからだよ。「そんなにサインが欲しけりゃ、買った人が自分で『春風亭一之輔』って書けばいいじゃないか!」。終盤よくわからないことを口走っていた私。約3時間でフィニッシュ。このサイン本が後日書店や落語会で販売される予定。Kさんが落語会に売り子として現れることもありそうです。因みにKさんは双子、妹さんが手伝いに来ることもあるので、みんな気をつけて!
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめたエッセー集の第1弾『いちのすけのまくら』(朝日文庫、850円)が絶賛発売中。ぜひ!
※週刊朝日 2023年2月3日号