
1962年に「涙を、獅子のたて髪に」で映画デビュー。60年近く俳優として活躍する加賀まりこさんが、作家・林真理子さんとの対談に登場。12日から公開する主演映画「梅切らぬバカ」について語りました。
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林:お久しぶりです。映画「梅切らぬバカ」(11月12日全国公開)見せていただきました。(加賀さん演ずる)珠子さんは素晴らしいお母さんで、「苦労した」とか「大変だった」とか、ありきたりのことをいっさい言わないんですね。ひたすら息子を愛して、周りの人もうまく巻き込んでいくという。
加賀:彼女のセリフで「ちゅうさん(塚地武雅が演じる自閉症の息子)をこの町の人気者にしたい」というのがあるけど、自分のほうが先に死んじゃうんだろうから、近所の人たちがちゅうさんを気にしてほしい、それしかないって考えたんじゃないかな。私自身も連れ合いの息子が自閉症なので、けっこう自然に演じられたと思う。
林:最初、この親子は、お隣の家族とギクシャクするところもありましたけど、この親子の魅力で、関係がいい感じになっていくし。
加賀:救いがないと、つらいわよね。
林:「隣がああしたこうした」とか、「あの人がこうしたああした」とか、そんなことばっかり言ってる世の中ですもんね。
加賀:ほんとにそう。如実に感じますよ。私が息子を連れて一緒に歩いてるときなんか、何かこだわりがあると息子は大きい声を出すときもあるのよね。そのときの通りすがりの人の目っていうのは、決してやさしくはないですもん。
林:たとえば電車の中で大きな声を出す人がいると、私もちょっとびっくりしちゃうことがあります。
加賀:べつに手を差し伸べてくれなくてもいいから、ほほえんでほしいの。コワい顔しないでほしいのよね。障害も個性だと思うから、ほほえんでほしい。
林:珠子さんが占師、というのもいいですよね。お母さんとしてもすてきですけど、一人の働く女の人として、占い(人生相談)で一刀両断にするところもカッコいいし、生き生きしてますね。決して大上段に振りかざしたりしないけど、この親子が温かくやさしく周りの人たちを少しずつ巻き込んでいくのが、すごくいい感じでした。