林:塚地さん、どうでした?

加賀:うまい、あの方。この役って、いつも斜め上を向いてて目線を合わせないから、間の取り方なんかが私も難しかったんです。休憩のときも、塚地さんとは日常的な「ねえねえ、きのう○○さんがさあ」みたいな話をする感じにならないの。彼、ちゅうさんになっちゃってるから。

林:ああ、なるほど。

加賀:思うに、自閉症の子って、自分から何か言うってことは多くないんです。だからたぶん塚地さんも、自分から何か言うとか、何かを欲するとか、そういうことをしなかったんだと思う。

林:塚地さん、実際にグループホームにいらしたそうですね。

加賀:そう。最初、本読みした日に、なんか彼が暗いので、私、「こういう家庭なんだから、明るくやろうよ」と言ったの。だけど、その日グループホームに行ってきたばかりだったらしくて、どうやって表現しようか悩んでるときに、私が余計なことを言っちゃったみたいなのね。すごくマジメな方。

(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)

加賀まりこ(かが・まりこ)/1943年、東京都出身。「涙を、獅子のたて髪に」(62年)で映画デビュー。「泥の河」「陽炎座」(ともに81年)でキネマ旬報助演女優賞受賞。「麻雀放浪記」(84年)など映画を中心に活躍するほか、劇団四季の「オンディーヌ」にも出演。映画、舞台、ドラマなどで幅広く活躍。近年の映画出演作に「スープ・オペラ」(2010年)、「神様のカルテ」(11年)など。自閉症の息子を持つ占師を演じる、54年ぶりの主演映画「梅切らぬバカ」の公開が今月12日に控える。

>>【ギャラは半分以下 加賀まりこが“地味な作品”に出演する理由】へ続く

週刊朝日  2021年11月19日号より抜粋

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